事業の目的
本事業は、宮城県の復興・再生の主力産業として期待される自動車・高度電子機械関連産業の電子化の進展や高度な制御技術に対応した自動車組込み技術者育成を推進する。また、自動車産業を取り巻く産業集積・高度化に伴い周辺産業の中でも需要の拡大が見込まれているCAD技術者の教育教材を整備する。地域・産学官が連携し、復興・再生を目指す産業界に人材を輩出・供給するため、すそ野の広い人材育成基盤を整備し、震災からの復興・再生・発展を担う人材の育成支援を展開する。
具体的には、昨年度までの事業成果を活用し、EV・HV(電気自動車・ハイブリッド車)やM2M(マシンツーマシン)・スマートハウス等に対応した新たな通信技術や制御・センシングの組込み技術の学習教材を開発し、社会人を対象とした実証講座を通して、技術者育成を推進する。また、周辺技術の中でもEV・HV(電気自動車・ハイブリッド車)やコンパクト車の需要拡大に伴い不足している設計技術者を育成する講座を実施し、自動車CAD技術者の育成支援を行う。工業高校学生を対象に自動車組込み技術基礎講座を実施し、宮城県の「再生期」、「発展期」また将来を担う技術者育成を推進する。自動車組込み技術、またその周辺技術の初級者から就業している現役技術者、社会人の学び直しによるキャリアシフト等各段階に対応した教育プログラムの整備、講座の実施等、すそ野の広い人材育成を展開し、東日本大震災からの復興を支援する。
地域の人材ニーズの状況、事業の必要性等
宮城県では、震災前から、産業振興により、第一次産業から第三次産業までバランスのとれた産業構造を目指し、国内外からの企業誘致と県内企業の育成による第二次産業(製造業)の集積促進を進めていた。震災復興においても、被災事業者への復旧支援に取り組む一方で、将来にわたって持続的に発展していくため、企業誘致と地元企業の発展を一体として、更なる産業の集積を図り、製造業の強化をすることが求められている。このような状況において、大手自動車メーカーによる復興支援と東北の拠点化の方針が発表され、自動車関連産業への新規参入・取引拡大に向けた大きなチャンスが生まれている。
●宮城県の産業別事業所数と従業者数の構成比
宮城県内には約10万事業所において96万人が働いる。内製造業の事業所は5千2百事業所、従業者は12万人となっている。大手自動車メーカーの進出により、製造業の従業員数は大幅な拡大が期待されている。
宮城県の震災からの復興・発展において、バランスの取れた産業構造の構築は重要な課題であり、製造業の事業所数の増加とともに従業者の増大が期待されている。今後の宮城県や東北地域においては、自動車産業を中心とした進出企業や進出企業との取引拡大を目指す地元企業への人材の供給(人材育成基盤の整備、高度人材の育成)が重要な課題である。東北地域に進出した企業は、高度な技術を持った技術者を求めるとともに、将来的に進出した地域の人材を継続採用することを予定しているため、産業界に技術者を供給する体制を早急に整備することが必要である。また、地元企業が進出企業との取引拡大に伴う人材需要の増加も期待されている。
本事業における自動車組込み技術者育成や集積する自動車関連産業の技術者育成および次代を担う人材育成は、今後の東北地域の復興・再生、発展にとって最も重要であり、宮城県において専門技術者の育成を担ってきた本校の使命であるとともに必要な取組みである。
前年度までの取組概要、成果と本年度との継続性
平成23年度~平成26年度事業
・取組概要
東日本大震災からの復興・再生・発展の柱である自動車産業の組込み技術者及びその周辺技術者の教育プログラム及び実証講座実施を通して、復興を担う自動車組込み分野の専門人材育成を行った。また、将来を見据え、行政・工業高校等の他の教育機関と連携したすそ野の広い人材育成を展開した。
・事業成果
●自動車組込み技術、次世代自動車組込み技術、自動車CAD技術等の教育カリキュラム、教育教材
●実証講座参加数 平成23年度からの延べ人数
社会人 99名、専門学校生 132名、高校生 1,522名
●みやぎカーインテリジェントセンターへの事業成果の提供と講座実施の連携
・本年度事業との継続性・関連性(成果を本年度の取組にどのように活用するのか)
本年度事業では、これまでの事業の成果物である教育教材を使用した講座を実施する。また、これまでの教材の内容を前提とした応用・実践の教育教材を開発し、技術の更新や向上に対応した講座を実施する。基礎講座を継続するとともにその拡充を目指し、すそ野の広い技術者教育を推進する。これらの取り組みを通して、宮城県の自動車組込み技術者の育成を支援し、地域の復興・再生を推進する。
事業の成果目標
期待される活動指標(アウトプット)・成果目標及び成果実績(アウトカム)
■期待される活動指標(アウトプット)
1 | 次世代組込みシステムのIoT、M2M等の技術調査 | 調査視察先 2箇所以上 |
2 | ものづくり講座テキスト | 60頁 |
3 | 自動車組込み演習テキスト | 50頁 |
4 | 自動車CAD演習テキスト | 50頁 |
5 | 次世代組込み技術(応用)教材 | 150頁 |
■成果実績(アウトカム)
1 | ものづくり講座 受講数 | 60名以上 |
2 | 自動車組込み基礎講座 受講数 | 360名以上 |
3 | 自動車CAD講座 | 基礎編 20名以上 応用編 20名以上 |
4 | 自動車組込み技術講座 | 20名以上 |
5 | 次世代組込み技術(応用)講座 | 20名以上 |
6 | 成果報告会への参加数 | 専門学校関係者 10名、 関連企業・団体 10名 |
事業の実施内容
①会議(目的、体制、開催回数等)
- ・推進協議会(年4回 17名 専門学校2校、他の教育機関3名、企業7社、行政・業界関連団体4名)
目的:事業方針策定、プロジェクトの進捗管理、予算執行管理、成果の活用・普及 - ・開発委員会(年5回 8名 専門学校1校(3名)、企業5社)
目的:講座テキストの作成、演習テキストの開発、教育教材の開発 - ・講座運営委員会(年4回 6名 専門学校2校(4名) 企業 2社)
目的:実証講座の実施運営、成果報告会の企画運営
②調査等(目的、対象、規模、手法、実施方法等)
●次世代組込みシステムのIoT、M2M等の技術調査
目的: | 次世代自動車のIoT、M2Mに使われている技術およびスマートシティ等における 他の機械との通信や制御技術を調査する。 また、自動車産業の集積地域における周辺技術(CAD)の調査を行う。 開発する教育教材に活用する。 |
対象、規模: | ・視察調査 自動車産業の集積地域(静岡県、愛知県等を想定) |
時期・手法: | 平成27年9月~11月、現地視察調査 |
実施方法: | 委員 4名による視察調査を実施 ※調査・分析は報告書として取りまとめる。 |
昨年度は、スマートシティでの次世代自動車の役割と技術調査を実施した。本年度は、人を介さずにデータ通信を行い、機器を制御する技術調査及び自動車産業集積地域の周辺技術について調査を行う。
③モデルカリキュラム基準、達成度評価、教材等作成
●ものづくり講座テキスト作成
●自動車組込み基礎講座演習テキスト作成
●自動車CAD演習テキスト作成(ものづくり講座、自動車CAD基礎・応用講座に対応した演習)
●次世代組込み技術(応用)教材開発
※次世代組込み技術・・・IoT(物のインターネット)、M2M(マシンツーマシン)等の通信制御技術
④実証等
●ものづくり講座
自動車産業等製造業に対する興味や将来の就業を見据えた、すそ野の広い人材育成をする。
・受講者: | 高等学校学生 「自動車組込み」「機械CAD」「デジタル家電」 各20名程度 総数60名程度 |
・講座開催地: | 本校 計2回程度 ・講座時間数:4時間×1日間×3講座×2回 |
・開設時期: | 平成27年8月・平成27年12月 |
・講師: | 協力専門学校・企業から講師を派遣し実施する。 |
●自動車組込み基礎講座
裾野の広い自動車組込みエンジニアの育成のための基礎講座を実施する。
・受講者: | 高等学校学生 各30名程度 総数360名程度 |
・講座開催地: | 本校および宮城県および近隣県内の工業高校 計12箇所程度 |
・講座時間数: | 3時間×1日間(15回程度) |
・開設時期: | 平成27年8月~平成28年2月 |
・講師: | 協力専門学校・企業から講師を派遣し実施する。 ※一般公募 2回、工業高校 13回程度 |
●自動車組込み技術者養成講座
自動車組込みの技術者を養成する講座を行う。応用、実践の技術レベルの修得を目指す。
※社会人、就業者の参加を促進するため、講座の実施時間、曜日等を考慮して実施をする。
・受講者: | 求職者、就業者等の社会人および高等専門学校、専門学校学生 20名程度 |
・講座開催地: | 本校(宮城県) |
・講座時間数: | 自動車組込み実践講座(5時間×3日 15時間程度) FPGAプログラム講座(5時間×3日 15時間程度) |
・開設時期: | 平成27年12月~平成28年2月 |
・講師: | 協力専門学校・企業から講師を派遣し実施する。 |
●自動車CAD基礎・応用演習講座
裾野の広い自動車組込みエンジニアの育成のため、周辺知識・技術の基礎講座を実施する。
・受講者: | 高等学校学生 基礎20名、応用20名程度 |
・講座開催地: | 本校(宮城県) |
・講座時間数: | 6時間×2日間×2講座程度 |
・開設時期: | 平成27年12月~平成28年2月 |
・講師: | 協力専門学校・企業から講師を派遣し実施する。 |
●次世代組込み技術(応用)講座
次世代自動車に使われている技術およびIoT(物のインターネット)、M2M(マシンツーマシン)等、人を介さずにデータ通信を行い、機器を制御する技術等における組込みシステムの実証講座を行う。
・受講者: | 社会人および高等専門学校、専門学校学生、高等学校学生 20名程度 |
・講座開催地: | 本校(宮城県) |
・講座時間数: | 6時間×2日間(1回程度) |
・開設時期: | 平成28年1月 |
・講師: | 協力専門学校・企業から講師を派遣し実施する。 |
事業成果及び事業終了後の方針
事業成果物
①ものづくり講座テキスト(60頁、400部)
②自動車組込み基礎講座演習テキスト(50頁、400部)
昨年度作成した自動車組込み基礎講座テキストと連携した演習テキスト
③自動車CAD演習テキスト(50頁、400部)
これまでに開発した基礎・応用講座テキストに対応した演習用テキスト
④次世代組込み技術(応用)教材(CD-ROM付属)(150頁、400部)
昨年度開発した次世代自動車基礎教材の知識・技術を前提にした応用レベルの教材
⑤事業報告書(80頁、400部)
成果の活用等
①成果の周知のため、データをHPで公開、情報系専門学校200校および組込み関連企業100社へ郵送配布
本年度、ものづくり講座講座テキストとして活用する。
平成28年度以降、すそ野の広いものづくり教育のため工業高校の教育に活用する。
②成果の周知のため、データをHPで公開、情報系専門学校200校および組込み関連企業100社へ郵送配布
本年度、自動車組込み基礎講座演習テキストとして活用する。
平成28年度以降、工業高校の教育に活用する。
高等学校教員の技術教育に活用する。 初級者等の社会人講座実施に活用する。
③成果の周知のため、データをHPで公開、情報系専門学校200校および組込み関連企業100社へ郵送配布
本年度、自動車CAD講座演習テキストとして活用する。
平成28年度以降、高校生対象の講座に活用する。 本校 正規課程の演習教材として活用する。
社会人対象の自動車CAD技術教育のため講座実施に活用する。
④成果の周知のため、データをHPで公開、情報系専門学校200校および組込み関連企業100社へ郵送配布
平成28年度以降の本校 正規課程の教育教材として活用する。社会人対象の講座実施に活用する。
⑤成果の周知のため、データをHPで公開、情報系専門学校200校および組込み関連企業100社へ郵送配布