事業内容の説明
事業の目的・概要
①目的・概要
アジア新興国等の生産技術の向上により、繊維製品の国際的な競争が激化している。ジャパンデニム・ジーンズの競争力を維持・発展するため、新たなグローバル戦略の構築が求められている。本事業は、国内デニム・ジーンズの生産拠点である岡山県をモデルに産業界の求める中核的専門人材養成の地域版学び直し教育プログラムの調査研究・開発・実証を行い、中核的デニム・ジーンズクリエイターの養成を推進する。
②養成する人材像
日本のものづくり産業としてのデニム・ジーンズアパレルが、新たな価値を創造し、進展する国際分業体制でのポジションと期待される役割を担うことのできるデニム・ジーンズクリエイター
※職業人としての知識・能力・素養、服飾系専門知識・技術、デニム・ジーンズ専門知識・技術、マーケティング力、マネジメント力、ものづくり現場力等の総合力を有する人材
事業の実施意義や必要性について
① 当該分野における人材需要等の状況、それを踏まえた事業の実施意義
アジア新興国等においてCAD/CAM等の生産工程のデジタル化が進展し、繊維・アパレル製品の高品質の生産が可能となった。日本のデニム・ジーンズ産業は、生産工程の付加価値や品質・価格の競争力が低下し、企画・開発等、生産工程以外から付加価値の創造が必要になっている。
また、従来国内需要を中心に戦略を展開していた日本のアパレル産業は、アジア新興国の経済成長の結果、アジア新興国や西欧圏をマーケットとした製品を提供する必要性が増加し、グローバル化に対応した新たな戦略構築が必要となっている。
ファッション市場規模(出展:平成25年度クールジャパンの芽の発掘・連携促進事業 調査報告書)
- n 中華圏は2020年までに60兆円拡大し、113兆円の世界最大の市場へと成長
- n 東南アジア圏は大きく成長するも、2020年時点で8兆円程度にとどまり、規模は限定的
- n 北米圏は堅調に成長。2020年までに10兆円拡大し、63兆円の市場規模に
- n 西欧圏は2020年時点で40兆円と一定の市場規模があるものの、成長は限定的
岡山県は、アパレルほか織布、染色加工、縫製など川上から川下までの業種が集積している地域であるが、アジア新興国等の台頭により、生産工程の海外移転(空洞化)、安価な輸入製品の増加、商社への依存度が高く海外の販路開拓が進んでいないなど多くの課題を抱えている。課題を解決するためには、企画・開発工程における差別化が必要であり、多段階の工程のそれぞれの強みを全体の強みに結びつけ、ブランド力を構築できる人材、また、拡大するアジア新興国を市場としたビジネスをクリエイティブな視点から展開できる人材が求められている。
このような状態は、日本のアパレル生産拠点各地域における共通の特徴である。岡山県デニム・ジーンズ産業をモデルとしたデニム・ジーンズクリエイターの地域版学び直し教育プログラムの整備は、共通の課題を抱える日本の生産地域でも活用が期待できる有用な取組みである。
②取組が求められている状況、本事業により推進する必要性
国内市場の停滞・縮小、海外の市場規模の拡大傾向を受け、今後、日本のアパレル産業が成長してゆくためには、海外への展開が不可欠である。しかしながら、これまで国内市場に依存していたため、繊維・染色加工・織物・縫製・アパレル・流通・小売等の工程の機能分化が進展し、日本のアパレル産業の海外進出は進んでいない状態である。
海外進出における課題として、国内市場を中心とした思考の継続や国内事業モデルやテイストの直輸出、輸出による関税・物流コストや小売との取引習慣の違い、現地を知る人材の不足、市場ニーズ・習慣の情報不足等が挙げられている。
これらの課題を解決し、国際的な分業化が進む中で、企画・開発工程での強みを構築するとともに、繊維・染色加工・織物・縫製・アパレル・流通・小売等の各工程の強みを総合力として構築し、国際分業体制の中での日本のアパレル産業のポジションを設計るとことが求められている。
本事業は、岡山県をモデルとして、デニム・ジーンズ産業に求められる中核的専門人材養成の地域版学び直し教育プログラムを整備するプロジェクトである。
具体的な取組み
- ・マーケティング・マネジメント力の養成講座の実施
- ・海外のジーンズメーカー競争力の調査
- ・産地コラボレーションによるものづくり現場力養成
- ・本プログラムの各地域への展開の実証
上記取組みを通して、服飾系専門知識・技術を有する人材に、デニム・ジーンズの知識やマーケティング、マネジメント力、ものづくり現場力を付加し、産業界の求める中核的デニム・ジーンズクリエイターの養成を推進する。
多くのデニム・ジーンズ産業の集積する岡山県には、日本ジーンズ協議会をはじめとして業界を代表する団体や企業があり、円滑な企業連携が可能であり、本取組みを有効に普及・推進することが期待できる。
また、本事業の成果をベースに、各地域への学び直し教育プログラムの展開・実施、現役技術者の知識・能力の更新、子育てを終えた女性を対象とした講座等への活用により、あらたな雇用の創造も期待される。
これからの岡山県デニム・ジーンズ産業、日本のアパレル産業に求められる、新たな価値を創造し、進展する国際分業体制でのポジションと期待される役割を担うことのできる中核的専門人材の育成は、産業界にとって最も重要であり、必要な取組みである。
③取組実施にあたっての平成26年度までに実施された職域プロジェクト等の成果の活用方針、方法等
昨年度の成果である「マーケティング教材」「マネジメント教材」を活用し、講座を実施するためのコンテンツ及び演習課題を作成し、講座を実施・実証することにより、デニム・ジーンズクリエイターの養成を推進する。また、各地域や企業研修、専門学校正規課程への導入の促進を図る。
昨年度、エドウィン秋田工場の調査で明らかとなった生産効率や環境対応について、新たな教材を開発整備し、国際化に対応した中核的専門人材の養成を行う。
昨年度、久留米絣の商社、工房の調査により、産地のブランド化や販路の形成について有用な取り組みがあり、岡山県の産地との違いや新たな考え方、ものづくり現場力を養成するため、事業に参画する久留米大学と相互に産地コラボレーションを実施し、教育プログラムの実証を通して、人材の育成を行う。
前年度までの取組概要・成果と本事業との継続性
平成26年度事業
・取組概要
世界の市場で評価の高いジャパンデニム・ジーンズのブランド構築やグローバルなビジネスの展開のできるクリエイター養成の教育プログラムの開発・実証を通して、産業界の求める人材育成のための新たな学習システムの基盤整備を目指した。このため、本年度の事業は、デニム産業が盛んな岡山県をモデル地区とし、産業界の求める人材育成のための調査研究・開発・検証および学習システム構築を行い、デニム・ジーンズ産業の中核的クリエイター養成した。
・事業成果
○活動指標(アウトプット)
1 | 調査 国内産地視察 | 2箇所 |
2 | 教材開発 | 2科目 |
3 | 実証講座 参加数 | 68名 |
4 | 協力者、協力機関数 本事業への有識者、業界団体等の協力機関数の指標。 |
協力者 5名、協力機関 2団体。 |
○期待される成果実績(アウトカム)
1 | 分野における社会人学習者の受け入れ数 | 14名 |
2 | 新たな評価体制に参加する機関数 | 企業 2社、 団体 1団体 |
開発教材による本校学生を対象とした講座実施、及び参画団体・企業の協力による社会人を対象とした講座実施を通し、地域版学び直し教育プログラムの実証をした。久留米、秋田の産地調査、シンガポールの海外教育視察を通し、産地・市場の現状と海外の教育の現状を取りまとめた。
・本年度事業との継続性・関連性(成果を本年度の取組にどのように活用するのか)
昨年度の成果である「マーケティング教材」「マネジメント教材」を活用し、講座を実施するためのコンテンツ及び演習課題を作成し、デニム・ジーンズクリエイターの養成を推進する。また、各地域や企業研修、専門学校正規課程への導入の促進を図る。
昨年度、エドウィン秋田工場の調査で明らかとなった生産効率や環境対応について、新たな教材を開発整備し、国際化に対応した中核的専門人材の養成を行う。
昨年度、久留米絣の商社、工房の調査により、産地のブランド化や販路の形成について有用な取り組みがあり、岡山県の産地との違いや新たな考え方、ものづくり現場力を養成するため、事業に参画する久留米大学と相互に産地コラボレーションを実施し、教育プログラムの実証を通して、人材の育成を行う。
事業の成果目標
期待される活動指標(アウトプット)・成果目標及び成果実績(アウトカム)
○期待される活動指標(アウトプット)
1 | 調査 海外産地視察 | 1国 3箇所以上 |
2 | 講座コンテンツ、演習課題の開発 | 2科目 |
3 | 教材開発 | 1科目 |
4 | 実証講座 | 2講座 |
5 | 産地コラボレーション | 1か所 |
○期待される成果実績(アウトカム)
1 | 社会人講座、専門学校教育への導入 数 | 4校 |
2 | 実証講座 参加数 | 50名 |
社会人学習者の受け入れ数 | 20名 | |
3 | 新たに参加する機関数 | 企業 4社、 団体 2団体 |
事業の実施内容
①会議(目的、体制、開催回数等)
・実施委員会
目的: | 事業方針策定、各委員会の進捗管理、予算執行管理、課題の検討、 成果の活用・普及、海外デニム・ジーンズ生産地調査企画 |
体制: | 専門学校 3校、大学 2校、企業 6社、業界団体 2団体 |
開催回数: | 3回(9月、11月、1月) |
・開発委員会
目的: | 地域版学び直し講座コンテンツ・演習課題の開発、生産管理(生産効率・環境対応)開発 |
体制: | 専門学校 2校、企業 2社、業界団体 2団体 |
開催回数: | 4回(8月、10月、12月、1月) |
・実証委員会
目的: | マーケティング・マネジメント実証講座企画実施 生産管理(生産効率・環境対応)実証講座企画実施 産地コラボレーションの企画・運営。 |
体制: | 専門学校 2校、企業 2社、業界団体 2団体 |
開催回数: | 4回(9月、11月、1月、2月) |
②調査等(目的、対象、規模、手法、実施方法等)
・海外デニム・ジーンズ生産地調査
目的: | 昨年度の日本国内のデニム・ジーンズ生産技術の調査により明らかになった生産技術や 環境への対応はこれからの人材育成に有用な調査であった。 本年度事業では、西欧圏へのデニム・ジーンズの最大の生産拠点であるトルコの デニム・ジーンズ工場を視察調査し、生産技術や体制、海外市場へのビジネス展開等の 取組を調査し、日本に不足する知識・技術の教育プログラム整備に活用する。 |
対象、規模: | トルコ共和国 ジーンズ関係の工場 5箇所程度 |
手法: | 現地訪問でのヒアリング |
実施方法: | 委員 4名で実施 |
③モデルカリキュラム基準、達成度評価、教材等作成(目的、規模、実施体制等)
・地域版学び直し講座コンテンツ・演習課題の開発・整備
目的: | 昨年度事業の成果のマーケティング・マネジメント教材をもとに講座に使用する |
規模: | マーケティング 30時間、マネジメント 30時間の講座を想定した講座コンテンツと演習課題 |
実施方法: | ④の実施結果および②の調査結果等を踏まえ、開発委員会で企画をまとめ、 開発は、委員参画の企業に依頼する。 |
・生産管理(生産効率・環境対応)教材の開発
目的: | 昨年度事業の成果を踏まえ、学び直しの科目の教材を開発する。 また、受講者の達成度を評価するためのテストの開発を行う。 |
規模: | 30時間相当の講座を想定したテキストと達成度テストを作成 |
実施方法: | ④の実施結果および②の調査結果等を踏まえ、開発委員会で企画をまとめ、 開発は、委員参画の企業に依頼する。 |
④実証等(目的、対象、規模、時期、手法、実施方法等)
・マーケティング・マネジメント実証講座の実施
目的: | 開発する地域版学び直し講座コンテンツ・演習課題の領域・範囲・レベルを検証し、 を精査する。 |
対象、規模: | デニム・ジーンズ関連企業(3社程度)の社員 本校学生 20名程度 |
時期: | 10月 4日間(1日4時間) |
手法: | 講義および演習 |
実施方法: | 協力企業・関係団体(日本ジーンズ協議会)からの講師派遣による実証講座の実施 |
・生産管理(生産効率・環境対応)実証講座の実施
目的: | 開発する生産管理(生産効率・環境対応)教材の領域・範囲・レベルを検証し、 を精査する。 |
対象、規模: | 本校および協力専門学校学生 20名程度 |
時期: | 11月 3日間(1日6時間) |
手法: | 講義および演習 |
実施方法: | 協力企業・関係団体(日本ジーンズ協議会)からの講師派遣による実証講座の実施 |
・産地コラボレーションの実施
目的: | 本校及び久留米大学学生を対象としたデニム・ジーンズ産地と久留米絣産地の コラボレーション演習を実施する。 各産地の企業から企画提案型のプロジェクトを行う課題を出していただき、 学生がチームを組んで企画提案をまとめる。 産地コラボレーションのモノづくり現場力養成について有効性について実証し、 人材養成に活用する。 |
対象、規模: | 本校及び久留米大学学生 各20名程度 参画企業 岡山・久留米 各1社(合計2社) |
時期: | 10月~12月 |
手法: | 説明会およびプロジェクト演習 |
実施方法: | 産地企業に協力を依頼 産地企業からそれぞれの課題を提案いただき、チームで企画案をまとめる 実施に当たっては、参加学生がそれそれの産地の特徴や商品情報を 知る必要があることから、工場等の現場にて事前説明会を実施する。 |
事業成果及び事業終了後の方針
事業成果物
①地域版学び直し講座コンテンツ・演習課題(100頁 700部)
昨年度事業の成果のマーケティング・マネジメント教材をもとにした講座コンテンツ・演習課題。
②生産管理(生産効率・環境対応)教材(200頁 700部)
昨年度事業の工場視察結果を踏まえ、今後の必要知識・技術を学習する教材を開発
③事業報告書(120頁 700部)
成果の活用等
①成果の周知のため、データのHPでの公開、服飾系専門学校 200校、ファッション関連企業等 400社へ郵送配布
- ・平成28度以降の社会人・女性対象の講座に活用
- ・他地域の専門学校等の講座実施、正規課程への導入に活用を促進する
- ・全国版モデル・カリキュラム基準にフォードバックし精査する
②成果の周知のため、データのHPでの公開、服飾系専門学校 200校、ファッション関連企業等 400社へ郵送配布
- ・平成28年度 社会人・女性対象の講座に活用 また、本校正規課程教育教材に導入を予定
- ・協力専門学校を通して他地域の社会人教育の活用できるか検証をする
③成果の周知のため、データのHPでの公開、服飾系専門学校 200校、ファッション関連企業等 400社へ郵送配布
成果の普及に活用する。産地コラボレーションの展開に活用する